やられた。
 久方ぶりにやられた。
 あのような強烈な食い物がこの世に存在していたとは。嘆息。
 恐るべし磯巾着。こんなもん喰わずとも人間生きられるのにさ。

 さてさてやってきましたは博多であります。仙台からひとっ飛び。行きと帰りでかかる時間が30分も違うのは地球の自転のせいでありましょうか。今もって納得いかず。大気というものがあるではないか。摩擦というものがあるではないか。

 それはさておき、荷物を置くと同時に早速探索に乗り出す。ときは16時。探索からそのまま放浪に移行せざろうえないことを懸念しつつ、出発。地下鉄にて天神に向かう。地下街の人の多きこと。土曜日とはいえ、本当に人が多い。さすがは九州の中心地。九州全土から週末ともなれば若人が天神を目指すとのこと。鹿児島の人はつばめを利用しましょう。開業したばかりです。
 今回是非とも行きたいと考えていたのが”さきと”であります。鯖が生で食えると。天神は親不孝通り(最近”富孝”に改名したらしい)、舞鶴1丁目にて発見。なんと軒下の器には白魚が放たれているではないか。これは、親父さんとの会話に入っていく格好の糸口だと確信しつつ、開店が18時であることを確認して、まだ時間があったので、適当なところでビールでのどを潤そうということになり、さらに探索の後、なかなかよい店構えの○○酒蔵を発見。入店する。

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 果たしてこの店は、なんと土曜日生ビール200円というサービス。もう、これだけが理由で入ったな。店構えの割に、店内は特に何ということもない、テーブルとお座敷とカウンターの、特に主体性のないつくり。まぁよいのだ。1時間で出ますから。
 生ビールが旨いのは当然のこと、この店では大根と豚肉の柔らか煮、レンコンのはさみ揚げを頼んだのだが、もっとも旨かったのは突き出しの鶏レバーの煮付け。体が鉄分を欲しているぜぇ。五臓六腑に染み渡るレバーの苦み。今日もよろしく頼むぞ肝臓。 店のおばさんとは、初めてよねぇ観光で来たのあぁ秋田からわざわざ遠いところから来たのねぇ秋田といえばお米おいしいでしょうあきたこまち、などというようなことを話しかけられるが、それ以上の交流を持つ意欲もなく、18時をすぎたところで慌てて○○酒蔵を飛び出したのだった。

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 次に向かうは、当然”さきと”であります。予想していたよりずっとかモダンな内装。カウンターのみ。ジャズが流れる。しかしながら親父さんはあまり愛想なく、仕事に徹する意欲が激しく感じられ、使われている若者二人も特によけいなことは喋らない。
 足をぶらぶらさせてしまうほど高いスツールにうんしょと腰掛け、早速日本酒を所望する。一番はじっこの、トイレに最も近い場所に陣取ったものだから、親父さんまでの距離が遠い。何とか呼び寄せ、福岡の酒を飲みたいのですが、と意向を伝えると、置いてある酒、5種類ほどを羅列する。取り敢えず、一本〆をとる。半透明のお銚子と透明なお猪口とともに供せらるる。
 ツィー。後味が軽いのだが、香りが鼻腔に残る。最初に呑むには好適である。
 突き出しが2種。タケノコの煮付けと細長い天ぷら(薩摩揚げ)だ。鰯だな多分。天ぷらは歯ごたえがあり、どっしりとした味である。
 そして今回もっとも楽しみにしていた鯖の刺身である。本来鯖は生食はしないものであるといわれている。そう。寄生虫がいるから。しかしながらかなり新鮮なものであれば何ともないとのこと。かえって寄生虫も元気なのではないだろうか。が、そんなことは全然心配しないのだ。
 と、出てきたのがこれ。何とも大きな切り身である。そして美しい。もう、アニサキスなんていたって構わないぼく。
 口に運ぶ。これが鯖の味だったのか。今まで経験することができなかったものを、今、口にすることができた。肉の線維がこんなに大きかったとは。皮の部分にこんなに歯ごたえがあったとは。余計なことを親父さんに質問したりせず、自分なりに捉え、満喫する。グルメ知ったかぶりをやめましょうとこのごろ考えています。そんなわけで親父さんとは前述の白魚のことも含め、ほとんどコミュニケーションをとれず。残念無念。でも、一見さんだもんね。

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 と、同行者が突然「あおさのみそ汁ください」と注文の声を発する。いきなりみそ汁かと一同(一人だけだが)色めき立つが、もしかしたらみそ汁で酒を飲むのも悪くないのではと気を取り直し、届いたもの(なんとどんぶりで供せらるる)を口にしてみると、そこは潮の香りと出汁の宝庫。この出汁は何だ。あおさからかなり出ているとしても、それだけであるはずがない。ワタクシにはどうしても貝のの出汁が含まれているように感じられてならぬ。が、知ったかぶって質問するのはやめよう。再現してみようと心に誓う。

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燗酒が欲しくなる。若者に問うてみると、本醸造繁桝という銘柄1種とのこと。ぬるめで頼む。と、これまで出会ったことのないようなお銚子で供せらるる。なんというか、土の中から掘り出してきた鎌倉時代の作品であるかのような古びた外見。枯れてる。本来お銚子の指で引っかける首の部分がない、口の部分がちょびっとしかないお銚子。そして、広がり方が尋常でないほど広い、つまり、足の部分と口の部分との直径差が1:5くらいのお猪口。このお猪口が非常に呑みやすかったのだ。ちょっと傾けるだけで酒がスイと口の中に送り込まれる。そしてこの繁桝の癖のないさらりとした口触り。いくらでも呑めるぞ!!そしてどんどん杯を重ねる。

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 途中、焼酎も飲んだりする。三岳、にごり芋、白岳など。にごり芋は、濁っていないのににごり芋。お湯割りやロックでいただく。グラスに5:5の目盛りが入っている。いいなこのグラス欲しい。あぁなぜか買うことまで思いつかなんだ。次回何とか。それにしてもやっぱり燗酒がいい。鰹の塩辛とカニミソトーフを肴に、いったい何本空けたことでしょうか。
 この日は、ここであまりに飲み過ぎたため終了。つうか、修了。


 翌日、まずは太宰府参り。受験合格を祈願する。19の頃、連れてきてもらったことがあるのだが、そんときの記憶としては、観光バスのガイドさんと一緒に餅を食べたことくらいで、あまりに貧弱な自分の記憶内容に父ちゃん情けなくって涙が出てくらぁ、といった心境なのだが、まぁそれはそれとして、日本全国YOSAKOIはいい加減にやめて欲しいものだ。
何をどうしたいというのだ。個性もオリジナリティも地域性もあったもんじゃない。もっと新しいものを作り出そうよ!! などと憤ってもしようがない。
 そして佐賀県に十数分ほど進入し、残るは大分と宮崎だけだと思いつつ昼食地点へ。そこでこの旅最大の苦難が待ち受けていたのだっただっただった…(←エコー)

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 みなさんにとってイソギンチャクって何ですか?胸に手を当ててしっかり考えてみて下さい。そう、海に住んでいる生き物で、ブニョブニョしていそうで、まぁいろはきれいなのもあったりして、そんなに縁が近い存在でもないし、地球生き物紀行とかでその生態を知って、ほぅ、とか感心する程度の対象ですよね。勝手に決めつけさせていただきたいと思います。
 が!しかし!! そうじゃねぇんです。つまみなんです福岡県の。
 あぁ、ワタクシはもう立ち直れないのだろうかと思うほどに衝撃でありましたとある食堂で摂取した磯巾着味噌煮の食感と味。
 ワタクシの赤裸々な報告。
○見た目
もう何がなんだか分かりません。形容しがたい色。もとの形がどうであったかなど想像すらできないその形状。もう降参です。
○食感
最初はドロッ。次にジャリッ。ガリッ。ニュルッ。もう降参です。
○味
旨みとは無縁。しょっぱみと甘みと苦みと、そしてエグみ。ワタクシの咽頭はこの食物を胃に送り出すことを全力で拒否しようとしていたのだが、最後にはワタクシの理性が勝利した。しかしながらもう降参です。

 久々である。ここまで体が受け付けない食べ物は。完敗である。
 でも大人である。頑張って、「なんだか後を引く味だなー」などと強がりながらさらに一個体を口にするが、後を引いていたのはただの辛さだけなのであった。全力でビールとともに飲み込むと、潔く降参することを力なく同行者に告げる。もう二度と口にすることはないであろう磯巾着。さようなら磯巾着。

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 辛い時代に別れを告げ、ついにワタクシの口にも幸せがやってきた。ウナギせいろ蒸しである。甘辛く味付けされたご飯の上に錦糸卵とウナギがのり、一口、口にしただけで、もう口の中はパラダイス。満喫したっす。すだれの間に挟まったご飯粒が心残りだっけな。

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 そんなこんなで博多の旅は終わり、帰り際空港で対馬産のあおさを見つけたんで買ってきた。早く味噌汁にしたい。豆腐は絹ごし。小さく賽の目に切って入れるのだ。そしてそれで酒を飲むのだ。博多の夜を思い出しながら。そう、思い出のかけらは引き出しにしまっておこう。

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